フジファブリックの新作「F」レビュー

CDレビュー

 

「仰いで踏み出して 貫いた夢だけは
諦めるなよ友よ 瞬く東京」

フジファブリックの今年発売された新作「F」。
まともにフルアルバムを聴いたのは志村さんが亡くなってから初めてという
「新生フジファブリック初心者」な私なのですが、
このバンドの持つ魅力と素晴らしさに、もうきっと12回ぐらい周回遅れしてようやく、
ようやく、
ようやく、実感を持って感じることができました。
ここから追いかけるにはあまりにも遅すぎるでしょうか。

 

冒頭で引用した歌詞は「東京」という曲の一節です。
「東京」と名の付く名曲がここにまた一つ誕生したわけですが、私の脳内の狭小なレパートリーを漁ってみたところ、

くるり
桑田佳祐
きのこ帝国

のいわゆる

「『東京』トップスリー」

に取って代わり、フジファブリックの「東京」が晴れて私の

「ベスト・オブ『東京』」

に君臨することになりました。

アルバム一枚通して聴いてみて感じたのは、99年~02年頃の邦楽ロックを聴いていた頃の懐かしさでした。

あの頃に堪能していたような、

耳によく残るメロディーライン
心地よいギミックを凝らしたギターロック
「ちゃんと聴ける」歌唱力

これらをハイレベルなテンションでアルバム一枚丸ごと覆い尽くしている。
そして1曲1曲が新米のコシヒカリのように粒が立っている。
名盤とは、こういう作品のことを言うのでしょうね。最高です。

まして、長年ファンをされていた方々からすれば、今もなお、これほどの作品を聴けるのはファン冥利に尽きるのではないかと推察します。
そしてそんな方々をフジファブリック初心者の立場からは大変羨ましくも感じます。

このオリジナリティは、長い年月と様々な出来事の輪廻の果てに獲得された強靭なもの。
それでいて、創造性に溢れていて、眩しいくらいに瑞々しく、若々しい。

この瑞々しさの源流はどこにあるのか、思い巡らせてみようとすると、
つい、私の大変好きなイギリスのバンド、New Orderと重ね合わせてしまいます。

70年代後半、UKポストパンクロックバンド、Joy Division。そのボーカルだったイアン・カーティスは、バンド初の全米ツアーの前日に自殺。ボーカルを失ったメンバーは、New Orderとバンド名を変え活動を再開。彼の自殺した月曜日を謳った「ブルーマンデー」が全世界で1,300万枚売り上げたことはともかくとして、彼らNew Orderは、前身バンドJoy Divisionで表現していたポストパンクを、ニューウェイブ、テクノロック、ハウスへと昇華し、新たなムーブメントを作り出したことに唯一無二の存在価値があると思っているのですが、

つまり何が言いたいかというと、フジファブリックっていうバンドは、そのぐらい何回も脱皮をして、今や名実ともに唯一無二のバンドになってるんじゃないかということに、本当に今更ながらに気づいてしまった、ということなんです。

ニューオーダーは結成してもうすぐ40年が経ち、今だに現役。ボーカルのバーナード・サムナーは60過ぎのおっさんですが、奏でる音楽は先鋭的かつメインストリームのテクノロック。2016年の来日公演は全身の毛が逆立つほどに興奮する最高のライブでした。

フジファブリックも、それくらい息の長いバンドになってほしいです。

そうすれば私のファン歴も、きっと中堅くらいの立場にはなるでしょうから。